タイトルの通り、完成予想ページ数を決めてから執筆に取り掛かる方法です。
もちろんページ数を決めずに地図なし大航海をするのも心躍る執筆ライフですが、
あらかじめページ数が分からないと頒布価格がなかなか決められない
というデメリットがあります。
(それをものともしない執筆スピードを誇る書き手さんならこんなこと考えなくて大丈夫です。それは才能です)
「最初にページ数を決めて書く」ことのメリット・デメリットについての詳細は下記をご参照ください。
- 小説の長さ(ページ数、文字数など)を決める
- 主目的を決める
- 主目的に付随する展開や要素を拾い集めて雛形とする
- 雛形を合成する
- 起承転結でいう「転」、物語の進展のきっかけを作る
- 各シーンごとのページ数(文字数)の配分を決めて、執筆スタート
- まとめ
小説の長さ(ページ数、文字数など)を決める
書く前に長さをある程度決めてしまう手法のメイキングなので、
お試しになる場合はひとまず長さを考えてみてください。
小説同人誌(A5サイズの縦書き2段組)としてよくあるページ数なのが、
28ページ、40ページ、60ページ、100ページ以上のもの
です。28ページ本は、界隈にもよるのですが200円~300円程度の頒布価格をよく見かけます。
頒布価格について気になる方はこちらをご参照ください→【ページ数とそれに応じる頒布価格について】
ページと文字数の関係
今回は例として28ページ本で進めていきます。
【28ページA5サイズ2段組小説同人誌】
レイアウトにもよりますが、A5サイズの二段組で文字の間隔が開き過ぎないように設定すると、
大まかに小説同人誌1ページあたり1000文字前後となります。
28ページの本文を書く時は、28ページ×1000字=28000字前後を目指して書くことになります。
実際に小説用テンプレートがあるほうがいい、という方はこちらをご参照ください→【Wordでの文字数設定・テンプレートについて】
また、表紙や裏表紙、あとがきページやトビラなどをページ数に含めると、本文はもうすこし少なくなります。
あとがきなどの事務ページを含めて28ページとする場合、
- 表紙1(本のタイトルなどが書いてある表紙)
- 表紙2(表紙からページを1つ捲った部分。マンガ単行本でいうと作者コメントなどが書いてある折り返し部分)
- 本文3ページ目~24ページ目
- あとがきページ
- 奥付ページ
- 表紙3(奥付の最後のページの次にある、厚い表紙用紙の部分。マンガ単行本でいうと「これまでの筆者の既刊」などがリストアップされている折り返し部分)
- 表紙4(裏表紙)
などがあるので、20ページから22ページくらいまで本文が減ります。
ひとまず今回は、20000字で28ページの本を作るとしましょう。
主目的を決める
28ページ(20000字)を目指して書くということは一旦頭から切り離して、
要素を練ります。
どんな傾向・どんな内容の小説を書きたいか、考えてみましょう。
ここでは「恋愛小説を書きたい」とします。
恋愛小説ジャンルの中でも、特に今回は「温泉に行く二人が書きたい」など、ひとまず書きたいものを考えます。
(一次創作、二次創作など書きたいジャンルは色々かと思いますので、今回はキャラクター設定を作る部分は省略します)
主目的に付随する展開や要素を拾い集めて雛形とする
「恋愛小説」「温泉に行く二人」という主目的が決まったところで、
今まで見てきた小説・ドラマ・アニメ・漫画などの中から、
【恋人たちを描く物語に「温泉」の描写がある話はどういった展開が待っていたか?】
を思い起こしてみてください。
温泉という主目的がある以上、
●旅館に行く・旅行に行く・(もしくは山を登って天然の温泉を見つける)
●その宿もしくは周辺にて、宿泊する
●現地で食事を取る
という三点の要素はほとんどの場合描写されていると思います。
これらはこのあとストーリーを練る上での雛形になります。
同じように、
【「恋人」の描写がある話はどういった展開が考えられるか?】
も想像してみます。
たとえば、この二人はまだ付き合っておらず、
「二人が付き合うようになるまでの過程」とするならば下記のような流れがメジャーだと思います。
◆片方が片方の容姿に惹かれるなどして思いを寄せ始める
◆ひと悶着あって(※)もう一人の方も気持ちを自覚する
◆二人の境遇、立場などから告白を躊躇するなどの心理描写がある
◆外部からのアクシデント(※)などによって、躊躇を飛び越え告白する
この流れも雛形になりますね。
このように、主目的や書きたい内容から、
「こういう展開がよくあるよね」という要素を次々見つけていきます。
最初に決めたページ数は今回28ページ(20000字)ですが、
肉付けをしていくと1つの雛形あたり1万字近く稼げる場合が多いので、
28ページなら上記2つの雛形を組み合わせればちょうどそれくらいの文字数になるはずです。
雛形を合成する
雛形がいくつか浮かんだら、今回の温泉要素と絡めてみましょう。
物語開始時点では恋人同士でもなんでもない二人が温泉旅行に行くなら、
【仕事の関係上仕方なく】とか、
【他の友人たちと合同の卒業旅行】とか、
【彼らはファンタジー世界の剣士と魔法使いで、泊まった宿が温泉宿だった】とか、
いくつか背景が考えられます。
とりあえずここでは
【他の友人たちと合同の卒業旅行】
を採用してみます。
ふたつの雛形を合成するための接着剤代わりに、【他の友人たちと合同の卒業旅行】要素を使います。
◆片方が片方の容姿に惹かれるなどして思いを寄せ始める
周囲の友人たちがそれを察し、卒業旅行と称して二人の仲を進展させるべく全員での旅行を計画。
●旅館に行く・旅行に行く
しかし当日友人たちの都合がつかず(友人たちの嘘)、二人だけ一足先に現地に向かうことに。友人たちとは現地で合流予定。
●その宿もしくは周辺にて、宿泊する
◆ひと悶着あって(※)もう一人の方も気持ちを自覚する
◆二人の境遇、立場などから告白を躊躇するなどの心理描写がある
●現地で食事を取る
◆外部からのアクシデント(※)などによって、躊躇を飛び越え告白する
……なんとなく形になってきました。
起承転結でいう「転」、物語の進展のきっかけを作る
ここで、先ほど雛形で「※」をつけた部分に注目してください。
・ひと悶着あって(※)もう一人の方も気持ちを自覚する
・外部からのアクシデント(※)などによって、躊躇を飛び越え告白する
※の部分は、彼らのあずかり知らぬところからきっかけとなる事件が起こって彼らに巡ってくる、というパターンが多くあります。
「温泉旅館のフィクション」でありがちな「アクシデントや事件」としては、
【温泉旅館で湯煙殺人事件に遭遇】
【酔った他の宿泊客に片方が絡まれ、危険な目に遭う】
などがあり、
「二人が恋愛関係に至るまで」の話でよくある「ひと悶着」としては、
【片方が、初恋の人や幼馴染と偶然再会して親密に見せる】
【旅行先の宿は、実は片方の昔の恋人との思い出の場所だったことが判明する】
などがあります。
この中から今回の二人のキャラクターに合いそうな要素を選んで再構築していくと……
◆片方が片方の容姿に惹かれるなどして思いを寄せ始める
周囲の友人たちがそれを察し、卒業旅行と称して二人の仲を進展させるべく全員での旅行を計画。
●旅館に行く・旅行に行く
しかし当日友人たちの都合がつかず(友人たちの嘘)、二人だけ一足先に現地に向かうことに。友人たちとは現地で合流予定。
●その宿もしくは周辺にて、宿泊する
◆【片方が、初恋の人や幼馴染と偶然再会して親密に見せる】描写にて、もう一人の方も気持ちを自覚する
◆二人の境遇、立場などから告白を躊躇するなどの心理描写がある
●現地で食事を取る
◆【酔った他の宿泊客に片方が絡まれ、危険な目に遭う】事件によって、躊躇を飛び越え告白する
これで骨組みの完成です。
各シーンごとのページ数(文字数)の配分を決めて、執筆スタート
さて、作ったあらすじに沿って序盤で決めた「20000字(28ページ)」をどう振り分けるか考えてみましょう。
- 片方が片方の容姿に惹かれるなどして思いを寄せ始める
- 周囲の友人たちがそれを察し、卒業旅行と称して二人の仲を進展させるべく全員での旅行を計画。
- 旅館に行く・旅行に行く
- しかし当日友人たちの都合がつかず(友人たちの嘘)、二人だけ一足先に現地に向かうことに。友人たちとは現地で合流予定。
- その宿もしくは周辺にて、宿泊する
- 片方が、初恋の人や幼馴染と偶然再会して親密に見せる描写にて、もう一人の方も気持ちを自覚する
- 二人の境遇、立場などから告白を躊躇するなどの心理描写がある
- 現地で食事を取る
- 酔った他の宿泊客に片方が絡まれ、危険な目に遭う事件によって、躊躇を飛び越え告白する
9シーンあるので、20000字÷9=1場面あたり2222文字
と単純計算で振り割ってしまっても大丈夫なのですが、
【8.現地で食事を取る】
これに2200字も書けるか不安です。
読書感想文400字詰め原稿用紙5枚以上です。食事だけで。グルメリポーターかな?
逆に、
【6.片方が、初恋の人や幼馴染と偶然再会して親密に見せる描写にて、もう一人の方も気持ちを自覚する】
……これは2200字では足りないかもしれませんね。
初恋の人という第三者を登場させ、その容姿や性格を描写した上で、
さらにどういう経緯で初恋をして、どういう経緯で破局を迎えたのか、という描写も必要になります。
とすると、
【8.現地で食事を取る】→500字~800字くらい
【6.片方が、初恋の人や幼馴染と偶然再会して親密に見せる描写にて、もう一人の方も気持ちを自覚する】→3900字~3600字くらい
という程度に振りなおした方がよさそうです。
このような流れで文字数を振り分けていき、
その文字数に沿って、500字~2000字程度ずつの短い小説という形で分割して書き進めます。
500文字~2000字程度なら、
1シーンあたりの長さは学生の授業レポートの文字数と同じくらいですね。
厳密に言うと、
【1.片方が片方の容姿に惹かれるなどして思いを寄せ始める】
ここは一次創作なのか二次創作なのか、二人のキャラクターの背景を掘り下げる必要があるかどうかで長さが変わってきますので、
このシーンだけは内容によってはさらに二分割か三分割くらいした方がいいかもしれません。
まとめ
さて、この流れで2万字(28ページ)の小説は書けそうでしょうか?
結局はご自身の書き方に合った執筆スタイルの方がストレス無く書けるものですが、
一度お試しいただいて、使えそうだ! と思われたら是非実践してみてください。